モルヒネやヘロインなどの麻薬を摂取しつづければ依存症になる。砂糖だって摂りすぎれば、依存症を引き起こす、と警鐘が鳴らされてきた。そのパイオニアは、1975年に世界に衝撃を与えたベストセラー「シュガー・ブルース」を発表した栄養学者で作家のウイリアム・ダフティである(1)。

その本の中でダフティ自身が、ほとんど麻薬依存者のような砂糖依存者だったことを告白している。まず、彼は8歳のころからソーダなどの砂糖水のとりこになり、思春期にはひどいニキビに悩まされる。大学に入ってからはコカコーラをガブ飲みし、心身ともに疲れはて、ついに大学を中退せざるを得なかった。そんな彼に転機がやってきた。

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友人から勧められ、マクロビオティックスの提唱者として世界的に著名な桜沢如一(さくらざわゆきかず)の本を読んだ。そこには「砂糖はアヘンよりも致命的で放射能の死の灰よりも危険な毒である」と書かれていた。これを読んだダフティは桜沢の教えにしたがい、食事療法を実践し、健康を取り戻した。

ここで砂糖とヘロインについて考えてみよう。

ヘロインは化学薬品そのものだ。ケシの実から乳液を取って乾燥させるとアヘンになり、アヘンを精製するとモルヒネという化学薬品になる。モルヒネを化学的に少し変えるとヘロインになる。

砂糖も化学薬品そのものだ。サトウキビやサトウダイコンの絞り汁を精製すると糖蜜になり、糖蜜をさらに精製すると赤砂糖になり、さらに精製すると白い粉の砂糖になる。

モルヒネ、ヘロイン、コカインに共通するのは、どれも白い粉であること、人を惹きつけてやまない強い依存性があることである。では、同じ白い粉である砂糖はどうなのか? 砂糖や甘いものに依存性があるのは経験的にはわかっているが、科学的に証明されているのか?

砂糖水を飲みつづけるネズミ

アメリカ、カナダ、ヨーロッパのすぐれた科学者たちが、動物を使った実験で、デザートや甘くてうまいものには依存症を引き起こす凄い力があることを発表している。

この分野で先頭を走るのは、40年もの間、脳がどのように食欲をコントロールし、また、食べものが依存を引き起こすのかを研究してきたプリンストン大学のバート・ホーベル教授だ。彼は1996年から砂糖が脳におよぼす影響を研究しており、その驚くべき結果に世界中が注目している(2)。
 
もともとホーベル教授は、食欲抑制剤が砂糖の摂取をどれほど減少させるかを調べようとしていた。そこで、ネズミに毎日2〜3時間砂糖水を与えた。そしてネズミが砂糖水を飲む量が一定になったら、その量が薬によってどのように変化するかを観察しようとした。
 
だが、思いがけないことが起こった。ほんの2〜3日のうちに、パブロフのイヌのような条件反射がネズミに起こったのだ。実験を担当していた院生が部屋に入ると、砂糖水が飲めることを知っているネズミが興奮しはじめたではないか! ネズミがいっせいに砂糖水をとりにカゴの前方に走ってきた。砂糖水の容器のノズルをカゴの前に並べると、ネズミが興奮し容器からノズルを引きちぎってしまい、あたり一面は砂糖水でびしょ濡れ。

ネズミの異常行動は、これだけではない。食べものと砂糖水を同時に与えると、ネズミは食べものを食べずに、砂糖水を優先して飲んだ。そして1日24時間、ネズミはずっと砂糖水を飲みつづけた。なぜ、ネズミが異常なまでに砂糖水を好むようになったのか? ネズミが砂糖依存症になったのか?

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