アキレス腱が切れた!
私の苦い経験を紹介しよう。2002年12月のとある日、私は運動中にバッタリ倒れた。左足がまったく動かせず、一歩も歩けなくなった。それで右足だけで飛び跳ねて移動し、ようやくイスに腰掛けることができた。運動靴と靴下を脱ぐと、左足はパンパンに腫れ上がっていた。

倒れる直前、まるでだれかに左足のすねの裏側を強く蹴られたかのように感じた。もちろん、蹴った人などいない。左足の指を自分の意志で動かすことができたので、まさかアキレス腱が切れたとは思わなかった。しかもその日は忘年会で、夕方、左足をひきずりながらも出席した。騒いで皆のおしゃべりを聞いて楽しい時間を過ごしたせいか、足の痛みをすっかり忘れていた。

出典:「マンガでわかる自然治癒力のしくみ」生田 哲、SBクリエイティブ

この事故から4日後、左足の腫れはいくぶんひいたものの、痛みは続いた。歩行は到底無理なので、タクシーで近所の接骨院を訪問した。わが左足を診察した院長は、アキレス腱の部分が小指1本ほど陥没しているのを発見した。院長は悪い知らせですと前置きしながら、「アキレス腱の全部ではないけれど、一部分が切れています。アキレス腱の部分断裂です」と告げた。

院長は私に2つの選択肢をしめした。それは、外科で手術してからつなぐか、それとも、切らずに、このまま足を固定して切れた腱が自然につながるのを待つかというもの。

「切れていないアキレス腱の部分をわざわざ切ってからつなぐ」という発想がどうにも賦に落ちない私は、外科による手術ではなく、接骨院での自然治療を選択した。そこで足先を少し垂らしたかたちをとると、腱の切れた部分が近づいたので、そのかたちで固定して帰宅した。

接骨院から週2回の往診をしてもらうたびに、固定をとりはずして左足のマッサージを受けた。こうして陥没した箇所が少しずつ盛り上がり、固定から約3か月たつと陥没はすっかり消えた。切れた腱がつながったのだ。固定がとれて松葉杖なしで自由に歩けるようになったときの嬉しさは格別であった。

では、切断された腱と腱はどのようにしてつながったのか。まず、腱の修復に活躍するのが、皮膚の下にあって血管を通し、細胞と細胞をつないでいる結合組織である。その仲間が腱に豊富に存在する線維芽細胞である。

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