1953年に生物学、それ以上に科学に革命が起こった。この年、ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの三次元構造のモデルを提出し、がんへの分子生物学的なアプローチを示した。

ワトソン博士

その後の数十年間、科学者は、がんを突然変異を持った遺伝子によって、細胞が休みなく分裂し、増殖する病気と考えるようになった。ワーブルグが研究人生をかけた代謝を担う触媒は細胞を日常的に営むのに必要である(ハウスキーピング酵素)が、がんの物語とは無関係であると見なされた。

だが、「分子生物学への移行は大失敗だった。ワーブルグは惜しげも無く捨てられた」と語るのは、ボストン・カレッジの生物学者トーマス・セイフリドである。ワーブルグは、がん研究の歴史において足跡を残すべき存在だった。南フロリダ大学医学部のドミニック・ディアゴシチノは、「私の学生ががんの生物学のクラスで使用する教科書に、がんの代謝が記載されていない」と語る。

しかし、過去10年間、特に5年間、思いもよらなかったことが起きている。それは、ハウスキーピング酵素ががん研究において最も期待できる分野のひとつになったことである。科学者は、代謝ががんのアキレス腱かもしれないと考えるようになった。すなわち、代謝は、多くのがんに共通する弱点なのかもしれない。

ひとつのがんに多くの変異が存在する。しかし、人体が生産するエネルギーは有限なので、がんが急激に成長するための手段は限られている。がん細胞は、正常細胞と違った方法で燃料を獲得する。ワーブルグの復活の最前線にいる研究者が抱く希望は、がんの増殖速度を遅らせる、あるいは増殖を止めることである。

では、どうすればいいのか?

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