あなたの遺伝子のオンとオフを左右し、免疫をコントロールする
あなたの体には、100兆個のバクテリアとその10倍ものウイルスが住んでいる。要するに、人体は微生物の集まりということだ。バクテリアの細胞数は人体の10倍。そしてウイルスの数はバクテリアの10倍である。これらの微生物は人体でさまざまな働きをしている。もし私たちが心と体の健康を保ちたいのであれば、彼らを適切なバランスを保って育んでいかねばならないことが明らかになってきた。

ヒトゲノム計画は遺伝子を基礎とした治療を提供するものと期待されていたが、いざプロジェクトが終わって明らかとなったことは、あなたの遺伝子は誰も想像できなかったほど小さな役割しか果たさないということだ。あなたの遺伝子は病気の発生に10%の役割しか果たしていないのだ(1)。残りの90%は環境因子によって引き起こされる。そして科学者は、どんなマイクロバイオームが存在するかによって遺伝子がオンになったり、オフになったりすることから、あなたのマイクロバイオームが健康と病気を分ける最も重要な因子であることに気づき始めた。

最新の研究で明らかになったことは、食事、ライフスタイル、化学物質の摂取によって、好むと好まざるとにかかわらず、あなたのマイクロバイオームは急速に変化しうることである。これは諸刃の剣でもある。


腸内細菌 by Pixabay

加工食品、抗生物質、農薬などの現代生活の便利さが、腸内細菌(腸内フローラ)に非常に悪い影響を及ぼしている。一方で、あなたの食事は、あなたのマイクロバイオームを改善し最適化するのに最も容易で最も効果的な方法でもある。

ヒトDNA は微生物の遺伝子を含んでいる
最新の研究によれば、バクテリアがヒトDNAに入り込んだことで、ヒトの多様性を広めたという(2)。科学者によれば、感染から身を守る免疫系を助ける遺伝子を含め、数百ものバクテリアの遺伝子が人類史において混入してきた。ヒトが食事を変えたり、新しい環境に適応するのを助ける遺伝子もあったかもしれない。毎月のように、バクテリアがどれほど私たちの生活に影響を及ぼすかについての新しい発見が発表されている。

腸内細菌がどのように体重に影響するのか?
バクテリアはヒトの健康と病気に影響する。2つの方法がある。あるバクテリアが過剰になることで、さまざまな病気が生じる。他のバクテリアは特定の病気の発生を妨げる。だから、これがないと、防御ができないため、病気になる。たとえば、研究者がマウスに抗生物質を投与し、乳酸菌、アロバキュラム、リケネラ、ガンジダタス・アルスミタスの4種類のバクテリアを取り除いたところ、マウスの代謝が変わり、体重が増え、肥満になった (3)。

研究が進むにつれ、肥満は腸内細菌の影響が大きいことが明らかになってきた。もちろん、ある食べ物が別の食べ物より効果的に太らせることは確かであり、バクテリアはこのプロセスを促進する。加工食品、フルクトース/砂糖、人工甘味料など、代謝障害とインスリン抵抗性を引き起こす食べ物は、腸内細菌のもたらす利益を大幅に減らす。これらの食べ物は肥満を促進するおもな原因である。化学物質もまた腸内細菌を通して体重を増加させる。

たとえば、2016年6月に「環境ヘルス展望」誌に公表された論文によれば、食べ物に含まれる「体内に長期滞在しやすい有機汚染物質」がマウスの腸内細菌を変化させ、肥満と代謝障害を発生させるという(4)。

別の研究でアッカーマンシア(A)・ムシニフェラは、血糖値を下げるだけでなく、インスリン抵抗性を軽減し、体脂肪の分布を改善することが確認されている(5)。(A)・ムシニフェラは腸内細菌の3~5%を占め、ファイバーが豊富な食事で育まれる。かなり以前からファイバーは、体重を減らす効果があることが知られている。(A)・ムシニフェラが単独でこれらの効果を発揮するのか、それとも他のバクテリアの働きを助けることで効果を発揮するのかは、不明である。

ファイバーを分解するバクテリアが免疫の働きを助ける
水溶性ファイバーを分解する腸内細菌は免疫系を調節し、炎症性の病気を予防する。とりわけ、この発酵による副産物が腸の内側の細胞を育てるため、毒素が腸内から血流に入るリーキーガット(腸の漏れ)を防ぐ。

炎症は腸内で始まり、脳に移動し、脳から全身にシグナルが送られる。だから、慢性炎症と炎症性の病気を防ぐポイントは、腸内細菌を正しい食事で育成することだ。伝統的な発酵食品や生の食品、とりわけファイバーリッチの食品を摂取するのがよい。一方、砂糖はカビを育て、イースト感染、蓄膿症(副鼻腔炎)を引き起こす。そして砂糖を多く含んだ食品を摂取することで学習障害が発生することも明らかになっている(6)。

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