アメリカ心臓協会(American Heart Association, AHA)の会長で心臓医のジョン・ワーナー氏が、52歳の若さで心臓マヒで倒れたことを述べた (1)。AHAの推薦する食生活を実践していたはずの彼が、なぜ、心臓発作に襲われたのか? その原因を探ってみよう。

間違った脂肪の推薦が悲惨な結果を招いた
1950年代以降、アメリカでは官民をあげて植物油がバターなどの飽和脂肪よりも好ましいと推奨され始めた。アメリカ人は、この推奨に忠実に従った。アメリカで植物油の消費が劇的に増えた。たとえば、大豆油の消費は600%も増えた。一方、バター、タロー、ラードの消費は半減した。砂糖の消費は劇的に増えた。これが心臓病と他の慢性病の主な原因と考えられる(2)。

このアドバイスに従うほどにアメリカ人はさらに太り、さらに病気がちになった。アメリカ人はAHAの「健康な心臓を作るダイエット」に従ったけれども、心臓病のリスクは少しも低下しなかった。常識でわかるはずだ。もしAHAのアドバイスが過去65年間成功しなかったのなら、今からうまくいくはずがないということを。

最新の研究で、植物油やマーガリンを摂取すると、心臓によくないことが起こることが、分子レベルで解明されている。たとえば、ブリティッシュ・コロンビア大学の生物学者サンジョイ・ゴッシュ博士は、ミトコンドリアは多価不飽和脂肪酸をそのユニークな分子構造のために燃料として容易に利用できないことを示した(3)。他の研究者は多価不飽和脂肪酸のひとつリノール酸がミトコンドリアの働きを妨げ、アポトーシス(細胞死)を引き起こすことを示した(4)。

多価不飽和脂肪酸は、皮下脂肪に容易に蓄えられない。その代わり、肝臓に蓄えられ、肝臓病の原因となり、あるいは動脈に蓄えられて心臓病を引き起こす。

UCリバーサイドの細胞生物学者フランシス・スラテック博士は、多価不飽和脂肪酸は人体が容易に排泄できないことから、組織に蓄積する毒物のように振る舞うという(5)。状況をさらに悪化させるのは、サンフラワー油やコーン油のような植物油が過熱されるとがんを引き起こす環状アルデヒドができることである(6)。

植物油は健康に悪い
他の研究から揚げ物が死のリスクを高めることが確認されている。たとえば、フライドポテトを1週間に2回以上食べると、フライドポテトをまったく食べない人に比べ、死のリスクが2倍になる(7)。

動物とヒト実験で、植物油はつぎのことを促進することが明らかになっている。

・肥満と脂肪肝(8)

・無気力、血糖コントロールの不調(9)

・慢性の痛み、原因不明の痛み(10)

・偏頭痛(11)

・クローン病と潰瘍性大腸炎(12)

「Deep Nutrition」(未邦訳)の著者ケイト・シャナハン医師によると、生化学的な見地から考えると、多価不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸よりも健康によいというのは間違いである(13)。多価不飽和脂肪酸は酸素と非常に反応しやすいのだ。この反応が細胞の働きを妨げ、炎症を引き起こす(14)。酸化ストレスと炎症は心臓病だけでなく、たいていの慢性病のシンボルでもある(15,16)。

AHAのメンバーたちは、飽和脂肪が炎症を発生させ、動脈にプラークを作り、心臓マヒを引き起こすと主張する。しかし、この主張を裏ずける生化学的な根拠は存在しない。じつは、多価不飽和脂肪酸が酸素と容易に反応するが、飽和脂肪は化学的に非常に安定であるため、同じ条件のもとで酸素と反応しない。

人体はクルミ、サケ、アマニ(低温圧縮、未精製)などの食べ物から得られるいくつかの多価不飽和脂肪酸を必要とするが、植物油は不要である。植物油とは、精製され、加工され、脱臭された多価不飽和脂肪酸は分子的に台無しにされた油で、人体が利用できない毒物となっている。

AHA会長へのオープンレター
ニューヨーク・タイムス紙のベストセラー「Wheat Belly,Lose the Wheat,Lose the Weight,and Find your path back to health」の著者でニューヨークの心臓医ウイリアムス・デービス氏は、AHAの会長ワーナー氏へのオープンレターを公表した。

「もし、AHAのナンセンスなポリシーを無視するなら、心臓病のリスクを低下させることができる。だが、AHAのポリシーの中に心臓病のリスクを低下させるための答えを見出すことはない。私はこのことを心臓医として働くうちに発見した。この愚かなポリシーを捨て、私は心臓病の発見と予防に全力を注いでいる」

AHAは、脂肪を摂取する代わりに糖質を摂るように勧めた。そしてアメリカ人は砂糖を大量に摂取した。その結果、アメリカ人はぶくぶくに太り、今に至る。

魔法の弾丸という神話の終わり
デービス氏は、心臓病というのはひとつの薬で解決できない多面的な問題であると主張する。例にスタチン剤を考えてみるとよい。スタチン剤が心臓病を防ぐという主張は単純化しすぎであり、バカげている。それは、ちょうどアリセプトを服用することでボケを食い止めると考えるようなものだ。もちろん、そんな薬はこの世に存在しない。

デービス氏は、こう続ける。「心臓病を引き起こす多くの因子に対応する薬は存在しない。しかし、その因子を発見し、修正する、薬に頼らない戦略がいくつもある」

デービス氏が提案する薬に頼らない戦略は、次の通りだ。

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