腱の切断と再結合のプロセスから明らかなように、治癒は、体の外部からやってくるものではなく、体の内部から湧き出る命の泉のようなものである。
傷、骨折、ねん挫、出血といったケガによって体の平衡は失われるが、これを元の状態にもどす力が「内なる治癒力」、言い換えれば、「生きる力」である。病気になりにくい人、病気からの回復の早い人というのは、「生きる力」の強い人ということである。
内なる治癒力の働くしくみはまだ解明されていない点が多い。
そのナゾを解く手がかりをみつけるために、つぎの3人のケースを紹介しよう。

<カゼをひいたケンのケース>
ケンはカゼが長引いたため、かかりつけ医を訪問した。
この医師は、ウイルスによる病気のカゼに対しては、抗生物質が無効なことを熟知していた。
だが、やや心配しやすい性格のケンは、カゼが悪化する兆候はみられないにもかかわらず、もしかしたら、細菌の二次感染によって肺炎を引き起こすのではないかと不安になり、医師に抗生物質を処方するように頼んだ。
医師はよく効く「抗生物質」を処方した。
だが本当は、医師が処方したのは抗生物質ではなく、それと外観がそっくりの「砂糖錠(偽薬)」だった。
薬の有効成分のまったく含まれていない砂糖錠には薬理学的な効果はまったくない。
しかし、「抗生物質」の服用をはじめてから一晩たつと、効果てきめん、カゼの症状はすっかり消えた。

<サプリメントをとったベティのケース>
ハーブの健康増進効果を強く信じているベティは、大評判の有機サプリメントをヘルスフード専門店で購入した。
この有機サプリメントが体によい効果を発揮するという科学的な根拠はないにもかかわらず、摂取をはじめて数週間後に、彼女は、以前よりずっと元気が出たことを実感していた。

<がんにかかったトムのケース>
がんを発症したトムは手術とそれに続く化学療法を受けた。
彼は、心の内なる治癒力を固く信じ、毎日、欠かさず、瞑想を実践し、なにごとにもプラス感情を持ち続けることを心がけ、かつて彼を怒らせたすべての人々を心底から赦すことを決意した。
そして彼は、病気になったのは不運によるもので、自分のせいではないことを理解し、自分自身を責めるのをやめた。
そうすると、気分がすっかり上向き人生を楽しむ余裕さえ出てきた。
彼は、手術から数年たった今でも元気に暮らしている。

ケン、ベティ、トムの3人のストーリーを紹介したが、彼らに共通する事柄を発見されただろうか。
もしかして読者は「共通点はなにもない」と答えるかもしれない。
しかし、わたしは、肉体の治癒を促進しようとする積極的な心、病気に挑戦する心、回復への希望が3人の共通点であると指摘したい。
彼らのケースのように、砂糖錠を服用した患者の容態が著しく改善される、あるいはがんが瞑想で治癒するというのは、科学では説明がつかない。
こうした患者の状態の変化をプラシーボ反応と呼んでいる。

出典:「マンガでわかる自然治癒力のしくみ」生田 哲、SBクリエイティブ

患者の症状が科学で説明がつかないほど劇的に改善するというプラシーボ反応は、
人体が、わたしたちを取り巻く環境から特別なメッセージ(またはシグナル)を受け取ったときに起こる。
では、これらのメッセージによって人体になにが起こっているのか?

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