偽薬に症状を改善する効果があることはよく知られている。たとえば、ノースウエスト医学研究所の精神科医アリフ・カーン博士は、1987年から1997年までの10年間にわたって FDA(米食品医薬品局)によって承認されたプロザック、ゾロフト、パキシルなど7種類の抗うつ薬にかんする45の治験データを調査し、抗うつ薬による改善率は41%、砂糖錠による改善率は31%であることを報告した(1)。砂糖錠は副作用がない分、抗うつ薬より優れている。

薬と異なり、実際に骨や組織を切る手術なら、プラシーボ反応が入り込む余地はきわめて少ないと思うかもしれない。だが、驚くことに、薬理的効果のないニセ手術でも実際には治療効果があることが実証されている。

2002年、テキサス州にあるベイラー大学のネルダ・レイ教授は、変形性関節症の患者を例にして医学界で最も権威のあるとされる「ニューイングランド医学雑誌」に報告して、世界に衝撃を与えた(2)。

変形性関節症(骨関節症)は関節に慢性の炎症が起こり、軟骨が破壊され、骨がこすれあい、激しい痛みに襲われる病気である。悪化すれば、炎症によって破壊された膝の軟骨を手術で取り除かねばならない。

この手術は、あらかじめ麻酔しておいた膝に光ファイバー鏡を差し込んで内部を観察し、必要に応じて、炎症や痛みを引き起こしている変性した軟骨を取り除くというもの。

この手術は本当に効果があるのか? どうやってそれを調べ、証明するのか?

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