マグネシウムは人体で4番目に多いミネラルである。マグネシウムは人体に存在するタンパク質の3750箇所以上にドッキングするため、健康への影響は計り知れない。だが、多くの人がマグネシウム不足になっている。たとえば、アメリカ人の50〜80%がマグネシウム不足といわれている。マグネシウム不足による健康へのマイナスの影響が心配である。

というのも、マグネシウムは、人体における生化学反応において重要な役割を果たし、ヒトの適切な代謝に欠かせない。数例をあげておこう。

・ATP(アデノシン三リン酸)を生産する。ATPは人体におけるエネルギー通貨である。

・血管をリラックスさせる。

・心筋を含む筋肉と神経の働きをスムースにする。

・骨と歯を形成する。

・血糖コントロールとインスリン感受性を高める。どちらも2型糖尿病を防ぐのに欠かせない。たとえば、マグネシウムは膵臓のベータ細胞がインスリンを放出するのに欠かせないばかりか、インスリンを働かせるメッセンジャーの役割も果たしている。


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もし細胞内でマグネシウムが不足すれば、細胞内における代謝が順調に進まなくなる。ミトコンドリアが働かず、エネルギーが十分にできない。元気も力も出ない。深刻な健康問題が発生するのは当たり前。研究によると、マグネシウムは心臓の健康にとりわけ重要である。

また、マグネシウムとカルシウムの適切なバランスも重要である。最近、カルシウムが過剰に摂取される傾向にあるが、その一方で、マグネシウムを十分に摂取する人は少数派となっていることが判明している。

マグネシウムが不足するとどうなるのか? まず、筋肉がケイレンし、心臓に問題が生じる。もし、カルシウムが過剰になると、この問題がさらに生じやすくなる。それは、カルシウムには筋肉を収縮させる働きがあるからだ。

マグネシウムは酵素の働きを助けるだけでなく、電解質としても働き、人体で電気を発生させるのにも欠かせない。もしマグネシウムやカルシウムなどの電解質がなければ、神経細胞に電気が発生しない。もちろん、神経細胞から神経細胞へと電気シグナルが送られることもないし、受け取られることもない。これらのシグナルがなければ、心臓は血液を送り出すことができないため、脳は適切に働かない。

カロリン・ディーン博士は、著書「奇蹟のマグネシウム(邦訳、熊本出版文化会館)」で、すべての臓器の中で心臓、とりわけ左心室は最もマグネシウムが必要であると述べている。マグネシウムが不足すると、心臓が適切に働かなくなる。高血圧、不整脈、心臓病などの疾病は、マグネシウム不足とマグネシウムとカルシウムの比率の一方的な偏りが引き金となることが多い(1)。メタ分析の結果から、マグネシウムの摂取量とその血中濃度が増えると、心臓病のリスクが低下することが確認されている。

血圧を正常にコントロールするカギ、マグネシウム
最近の研究によると、マグネシウムは血圧をコントロールするカギとなっている。よく知られているように、高血圧は心臓病と脳卒中のリスク因子である。すでに述べたようにマグネシウムは血管をリラックスさせ、拡張するため、血圧を低下させる。

総計2,000人以上が参加した34の治験のメタ分析がある(2,3)。被験者のマグネシウム摂取量は1日240~960mg。そしてマグネシウムの摂取量が増えると、血圧が下がるという結論となった。具体的には、1日368mgのマグネシウムを3ヶ月間摂取することによって収縮期血圧(上の血圧)が2下がり、拡張期血圧(下の血圧)が1.78下がった。

論文の著者のひとり、スーザン・スタインバウム博士は「1日368mgのマグネシウムというのは、健康的な食事をすれば摂取できるので、サプリメントの摂取は不要である」と述べている。同博士は、こう続ける「私は、医者としてバランスのとれた食事をとることを強く勧めます。コレステロールを下げ、血糖値を安定化させるだけでなく、血中に適切な量のマグネシウムを提供するためでもあります。血中マグネシウムの測定を心臓の健康のスクリーニングとするのは、高血圧の予防と治療に欠かせないものとなるかもしれません」

マグネシウムレベルを適切に維持するのに有効な方法は、深緑色の葉野菜を十分に食べること。緑色の野菜から生ジュースを作って飲むとよい。マグネシウムレベルを高めるだけでなく、植物に由来する多くの栄養素を摂取するのにも効果的だ。

だが、もし土壌にミネラルが不足していたら、食物中のミネラルも低くなる。最近、農家が土の再生に特別の努力をしない限り、ミネラル不足の土壌が増えてきている。もしあなたが全体食を食べて、マグネシウム不足の兆候がないなら、おそらく、マグネシウムは十分に摂れている。だが、もしあなたにマグネシウム不足の兆候が現れたなら、サプリメントの摂取を考えてもよい。

マグネシウムを多く含む葉野菜は、ホウレンソウ、カブの葉、テンサイの葉、ブロッコリー、芽キャベツ、ケール、レタスなどである。

マグネシウム不足のリスク因子、兆候、症状
マグネシウム不足を引き起こす主なリスク因子は、加工食品の摂取である。この理由は、マグネシウムはクロロフィルの中心にあるから、上にあげたような緑色の葉野菜の全体食を十分に摂取しないなら、食事だけから十分なマグネシウムを摂れないだろう。

しかもマグネシウムは、ストレスでも激しい運動によっても失われる。加えて、睡眠不足、アルコールの摂取、利尿薬、スタチン剤、フルオリド、フルオロキノロンなど特定の処方薬を服用しても消失する。そしてマグネシウムレベルは、インスリンレベルが上昇しても低下する。これらは先進諸国に住む大多数の人々が直面している因子である。
不運なことに、ナトリウムやカリウムとは異なり、人体におけるマグネシウムの状態を高い精度で簡単に測定する商業的なラボテストは存在しない。それは、人体に存在するほとんどのマグネシウムは、骨と筋肉、腱、脂肪、血管などの軟組織に存在するからだ。人体の総マグネシウムのわずか1%が血液中に現れる。

特別なラボはRBCMg(赤血球中のマグネシウム濃度)を測定してくれる。これが目安となるかもしれない。だが、おそらく、あなたのマグネシウム状態を推測する最善の方法は、現れた症状を注意深く観察し、判断することだ。マグネシウム不足の初期の症状は、charlie horse(チャリー馬、筋肉の酷使による筋肉の硬直)、頭痛、偏頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、疲労感である。これらの症状は、どれもマグネシウムを積極的にとるべきであるという警告である。これよりはるかに深刻な症状を引き起こすのが、慢性的なマグネシウム不足で、その代表は、心臓の不調、心臓動脈の痙攣、震え、無感覚、性格や行動の変化などである。

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