ダイエットに成功しても、多くの人がリバウンドし、失望する。痩せようと決心し、摂取エネルギーを減らすと、体重が減る。そこで安心してダイエット以前の食事に戻すと、みるみる太ってダイエット以前の状態に戻る。これが「肥満のヨーヨー効果」である。だが、さらに悪いことに、再発した肥満者の大多数がダイエット以前の体重に戻るだけでなく、ダイエット・サイクルを重ねるたびに体重を増やす。

ダイエットと体重増のサイクル中で体脂肪が増えることによって、2型糖尿病、脂肪肝、その他、肥満に関係する病気、すなわちメタボリック・シンドロームのリスクが格段に高まる。

最近、腸内のマイクロバイオームと肥満や代謝障害に密接な関係があることが明らかになってきた。長期にわたる体重のコントロールをマイクロバイオームの視点から追求したのが、ワイズマン科学研究所の科学者たちである。

肥満とマイクロバイオーム By Pixabay

2016年11月、彼らはマウスを使い、腸内細菌がダイエット後の体重増に予想以上に大きな役割を果たしていること、このよく見られる「肥満のヨーヨー効果」という現象は、将来、マイクロバイオームの組み合わせによって防ぐ可能性を「ネイチャー」誌に発表した(1)。

この研究は、免疫部門を率いるエラン・エリナウ博士のグループとコンピュータ・サイエンス部門のエラン・シーガル教授のコラボによる。彼らはどんなことを発見したのか?

マウスに高脂肪食を通常食を一定期間交互に食べさせ、体重減と体重増のサイクルをくり返させた。マウスが通常食を摂取して元の体重に戻ると、体脂肪、血清コレステロール値、ブドウ糖耐性、血清インスリンレベルなどのマウスの体の状態はマイクロバイオームを除いてすっかり元の状態に戻っていた。だが、体重を元に戻したマウスは、腸内に肥満のマイクロバイオームを6ヶ月間保っていた。

エリナウ博士は、こういう。「私たちは、肥満マウスはダイエットによって体重減に成功した後でも、肥満のマイクロバイオームは以前の肥満状態を覚えていること、この持続性のマイクロバイオームが、マウスが高カロリー食または通常食を過剰に摂取した時の体重の回復を促進することを示した」
シーガル博士は、さらにこういう。「今、マイクロバイオームの詳細な機能分析によって体重増を軽減する方法の開発を試みている」

一連の実験を通して、肥満マイクロバイオームがダイエット後の体重増の要因であることが明らかになった。たとえば、肥満暦のあるマウスに広域抗生物質を投与して腸内細菌を消滅させたところ、ダイエット後の体重増は軽減された。

もうひとつの実験。肥満暦のあるマウスの腸内細菌を移植された無菌マウスが、高カロリー食を摂取したところ、肥満暦のないマウスの腸内細菌を移植された無菌マウスに比べ、体重がさらに増えた。

次に、彼らは、体重減と体重増のサイクルをくり返した後で、マイクロバイオームの特徴に基づき、それぞれのマウスの体重増の速度を高い精度で予測するアルゴリズムを作成した。さらに遺伝子と代謝の研究を取り入れ、体重増におけるマイクロバイオームの役割を決める2つの分子を発見した。

これらの分子は「フラボノイド」と呼ばれるもので、ダイエット後の腸内において急速に分解する。このため、ダイエット後のマウスでは肥満暦のないマウスに比べ、2種類のフラボノイドのレベルが著しく低下していた。

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