がん患者は抗がん剤治療を受けることが多い。だが、その効果は疑問である。統合医療アカデミー理事長のリー・コウデン医師は、「たいていの人はがんで死ぬのではなく、治療による副作用で死ぬ」と述べている。

「対がん戦争」はより個人的な方向、すなわち、精密医学へと向かっているが、「切る、毒を盛る、焼く」といった手術、化学療法、放射線による治療が当然のように行われている。これらは「がんの標準治療」とされている。

抗がん剤治療における大きな問題のひとつは、非選択的な毒性にある。すなわち、がん細胞を殺そうとして、あなたの全身に毒を撒き散らすことにある。抗がん剤治療には利益よりも害が多い、という致命的な欠陥がある。この兆候はずっと以前からあった。

たとえば、乳がんの抗がん剤タモキシフェンのケースでは、患者はリスクを別のリスクと取引する。すなわち、タモキシフェンの服用によって乳がん組織は小さくなるものの、子宮がんのリスクが2倍に跳ね上がる(1)。

抗がん剤は、しばしば患者を死に至らしめるほど強い副作用を引き起こす。この結果、予見できない深刻なマイナスの作用が生じ、がんの予後を改善するよりも、むしろ悪化させることが多い。そして抗がん剤が手術の前に患者に投与されることが多い。これを「術前化学療法」という。「術前化学療法」はがん組織を小さくすることから頻繁に使われる。これにより女性が乳房全摘手術よりも部分切除を受ける可能性が高まる。これはメリットのように見える。

だが、アルバート・アインシュタイン医大のジョージ・カラジアニス博士は、乳がんの術前化学療法は、がんの他の部位への転移を促進することを「トランスレーショナル医学」誌で発表した(2)。すなわち、抗がん剤で治療することによって乳がんがより攻撃的になり、全身に広まるのだ。これにより女性が乳がんで死ぬ確率が格段に高まる。メリットのように見えたのは、幻にすぎなかった。


増殖するがん細胞  by Pixabay

マウスとヒト組織で調べたところ、抗がん剤の投与によって「がん転移を促進する微小環境」が増加し、転移の可能性が高まっていることが確認された。がん転移を促進する微小環境は、特別な免疫細胞が集まる血管のある箇所だ。免疫細胞はがん細胞を捕らえ、これを血管内に運んでいる。まるで配車サービスが客を運ぶかのようだ(3)。

血管は離れた組織にものを運ぶハイウエーである。だから、ここにがん細胞が入ると、遠く離れた箇所にがん細胞が移動する。こうしてがん転移が起こる。

乳がんのマウスやヒトが抗がん剤治療を受けると、がん転移を促進する微小環境が変化し、がんが転移しやすくなる。その変化は3点ある。

・がん細胞を血管に運ぶ免疫細胞の数が増える。
・血管ががん細胞に浸透しやすくなる。
・がん細胞の動きが速くなる。

マウスに抗がん剤を投与すると、血液中と肺中のがん細胞の数が抗がん剤を投与されていないマウスに比べ2倍に増えていた。抗がん剤治療を受けた20人の患者では、がん転移を促進する微小環境ががんの広がりを助長するように変わった。有毒な薬物治療が、がんをさらに強く育て、人体の修復機構をオンにするのだ。そして、がんを人体に広めるための血管の玄関の数を増やすのである(4)。

2012年、「臨床腫瘍学」のエディトリアルでアン・ショット博士は、こう述べている(5)。「不運にも、術前化学療法は米国がん臨床研究グループ(NSABP)のB18治験や他の治験が証明したように、がん患者の生存に貢献しない」

女性は、がんの生存率を改善しない治療を受けているだけでなく、これによってがん転移のリスクをさらに高めているのである。

がんを治療しようと患者が服用する抗がん剤が逆にがんを広めるという、悪い冗談としか聞こえないが、本当のことだ。一般人には驚きだろうが、専門家はどうなのか?

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