世の中には真偽のわからない健康情報が山ほど流布している。これらの情報の多くは、ウソ情報である。しかも、これらのウソ情報を国民の多くはそのまま受け取っている。
たとえば、日本人はカルシウムが不足している、と信じる人が多い。だが、日本人はすでにカルシウムを十分に摂取している。このような人たちが、カルシウムをさらに摂取すると、心臓病のリスクが高くなる。

また、がんになったら、抗がん剤による治療を受けるのが当たり前とされている。だが、抗がん剤は効かない。生存期間を伸ばすことも、QOL(生活の質)を高めることもない。医療関係者の多くが知る、あるいは知らない事実である。驚くのはまだ早い。抗がん剤が新しいがんを誘発する。がん専門医はこの事実を知っているが、抗がん剤の説明時、心配かけまいと自己正当化し第2次がんについてはまったく触れない。そして一般の医師や患者は、抗がん剤が新たながんをつくる、という事実をまったく知らない。この結果、この事実は筆者が知る限り、日本で報道されることはなかった。

自分の身は自分で守る。当然のことでしょう。自分の身を守るには、良いサイエンスと悪いサイエンスを見分ける眼力を持たねばならない。この眼力を持たない人は、ウソ情報に容易に騙され、健康被害を受ける羽目になる。この眼力を得るには、科学における基礎知識が必要である。一朝一夕というわけにはいかない。しかも、科学における基礎知識をネットの断片的な情報から得るのは困難で、どうしても信頼できる本を読まねばならない。本書がその一助になれば幸いである。

「それホントに体にいい? 無駄? 健康神話」を科学的に検証する」(草思社)

定価(本体 1800 円+税)

もうひとつ。どんな場合であろうと、素晴らしい研究結果が発表されたら、最初に発すべき疑問は、誰が資金を提供しているのか、と問うことである。もし企業が資金を出しているのなら、素晴らしい研究結果に疑いを持たねばならない。企業がスポンサーなのか、どうか、どうやって判断するのか? 簡単である。まともな学術雑誌であれば、論文のたいてい最初のページにスポンサー名を記載する決まりになっているので、確認するとよい。

あなたの人生は、あなたの選択と努力による生活様式によって決まる。あなたの飲む水、コーヒー、牛乳、パーティや晩酌で嗜たしなむビール、ワイン、ウイスキー、あなたの口にするチョコレートやケーキ、あなたの摂取するビタミン、カルシウム、ビタミンDのサプリ、がんの予防やがんになったときの対策、感染症対策や感染症にかかったときに服用する抗生物質、ダイエットに使う人工甘味料、ストレスを解消するための瞑想やヨガなどが、あなたの人生を左右するのである。

本書の目標は、健康について興味深いトピックスを取り上げ、そのトピックスについての誤った常識を「神話」と命名し、神話の真偽を科学的に判定し、科学的根拠にもとづく健康知識を提供することである。私が本書で採用した文献のほとんど全部は、海外の一流科学・医学雑誌に掲載された論文であり、企業がスポンサーになっていない研究によって得られた論文である。 

さらに詳しく学びたい読者のために、「参考文献&脚注」に文献の出典を示した。文献はできる限り、PubMed(パブメド)に記載されているものを採用した。読者はインターネットでPubMedを開き、PMID(パブメドアイディ)の数字を打ち込むだけで、論文のタイトルや掲載雑誌の詳細を入力しなくても、該当する文献にたどりつくことができる。  

本書を通して、読者が良いサイエンスと悪いサイエンスを見分ける眼力を養い、その眼力を用いて健康情報を取捨選択し、人生に少しでも役立てて欲しい。そうなれば、著者としてこの上ない幸いである。