がん細胞はどんどん食べる:ワーブルグ効果の意味
メモリアル・スローンケッタリングがん研究所所長のクレイグ・トンプソンは、代謝に焦点を絞ったがん研究を強く支持している。トンプソンは、ワーブルグ効果を社会的な失敗にたとえて次のように説明する。ワーブルグ効果は、単細胞生物が多細胞生物になる時に結んだ、栄養素をシェアするという契約の破棄である、と。
Dr. Craig Thompson
彼の研究によると、細胞は食べろという命令を他の細胞から受け取って初めて食べる。ちょうど細胞が分裂する際に、他の細胞から命令を受け取るのと同じである。もし細胞に本来食べるべき量より多くのブドウ糖を消費させる遺伝子が発見されたなら、ワーブルグ効果とがんの始まりを説明するのにさらに長い時間がかかるだろう、とトンプソンは予測した。
しかし、この遺伝子を探求するトンプソンの研究では、新しい遺伝子は発見されなかった。その代わり、分子生物学者によく知られたAKTという細胞分裂を促進する遺伝子に行き着いた。トンプソンは、代謝においてAKTは基本的な役割を果たしていると信じている。
AKTによって作られるタンパク質は、細胞内で作られたタンパク質をどこに輸送するかを指示するものだ。80%のがんでAKTの変異が見つかっている。AKTの変異は発がんのカギである。
トンプソンは、こういう。このタンパク質が暴走すると、細胞は他の細胞からの食べろとか、食べるなという命令をぜんぜん気にしなくなり、その代わり、自分でブドウ糖をどんどん食べるようになる。
じつに彼は、正常細胞に活性化したAKTタンパク質を導入し、完璧なワーブルグ効果を発揮させることに成功した。AKTタンパク質こそ、ワーブルグ効果のカギだったのだ。