抗生物質のチャンピオン、ペニシリンは1928年に偶然発見され、今でも世界で最も広く使われている薬である。抗生物質は症状を改善し、回復を早め、バクテリアによる破壊的な感染から人の命を守る。このことは前回も述べた。

その通りである。だが、抗生物質の乱用によってさまざまな問題が生じていることを述べた。              引き続き、その問題点を紹介する。

4. 抗生物質を動物に与えることも問題を発生させたり、悪化させたりしているのか?

その通り。アメリカで使われている抗生物質の70%は、ウシ、ブタ、トリなどの家畜に与えられている。日本の状況もこれとだいたい同じ。あるケースでは動物の病気の治療に使われるが、たいていのケースで、汚い、混雑した工場のような農場での病気の予防、そして家畜の成長を促進するために使われる。 

動物に大量の抗生物質を与えると、どういうことになるかというと、ヒトに抗生物質を大量に処方するケースと同じように、耐性菌の発生を引き起こす。耐性菌は動物に直接に触れても、あるいは、動物を屠殺して食べ物に変えても最終的にヒトに感染することになる。

この問題が明らかになったにもかかわらず、世界における抗生物質の消費量は増え続けている。たとえば、抗生物質の消費量は、2013年の13万1000トンから2030年までに20万トンに増加すると予想されている。

 

5. 抗菌洗剤を使用すると、どんな影響があるのか?

抗菌洗剤や抗菌消毒液もまた抗生物質の過剰な使用とよく似た結果をもたらす。抗菌洗剤を効果の出る濃度以下で使うと、バクテリアをトレーニングすることになる。要するに、耐性菌の発生を助長するのである。

NSF(全米科学財団)国際応用研究所の主任研究員クリスティン・グリーン博士は、こういう。「抗生物質によってすべてのバクテリアが死ぬわけではない。生き残ったバクテリアが耐性を担う遺伝子を作り出す」

問題なのは、トリクロサン(Triclosan)という抗菌剤だ。トリクロサンは、薬用石鹸、うがい薬、食器用洗剤、練り歯磨き、脱臭剤、手の消毒剤、化粧品などに使用されている。

2016年、FDA(米食品医薬品局)は、トリクロサンとこれに似た物質を石鹸や消毒液に添加することを禁止した。しかし、これらの化学物質はボディソープ、歯磨き、台所用の洗剤などの商品に使われている。

日本でもトリクロサンは幅広く使われてきたが、2017年、厚労省は業界に製品を1年以内に代替製品に切り替えるように指導した。商品を購入する時は、表示をよく見ることだ。それから、薬用石鹸などを使う必要はない。普通の石鹸で十分だ。

なお、洗剤や消毒液に含まれるアルコールはバクテリアを殺すが、耐性を発生させない。消毒にはアルコールがオススメ。

では、バクテリアはどのように耐性を獲得するのか?

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